67年も前に計画され、不要不急の大型公共事業と指摘されながら国交省が工事を推し進めてきた八ッ場ダムは、ダム本体のコンクリート打設が完了し、今年10月には試験湛水が開始される。八ッ場ダム予定地は、浅間山の噴火による火山灰や岩屑(がんせつ)が流れ出て堆積した脆弱な地層であり、古来から地すべりが多発してきた。このような場所にダムを造ること自体が危険極まりない。

しかるに、水没地域の住民のための住宅や施設は、ダム貯水池を取り囲むように30メートルの高さに盛り土造成された代替地にあることから、湛水前に、地すべり防止のため万全の安全対策を講じなければならない。

しかし、国交省によるこれまでの地質調査と地すべり対策工事では、到底安全性は確保できないと、千葉大学名誉教授の伊藤谷生氏ら複数の専門家が指摘している。

2011年の八ッ場ダムの検証で、10カ所の地すべり危険箇所と5カ所の代替地で約150億円をかけて対策工事を行う方針が示された。ところがその後、経費節減のため、対策箇所が次第に減らされ、地すべり危険箇所は5か所に、代替地は3か所に縮小された。対策工法も、代替地は鋼管杭工法から安価なソイルセメントを使った押さえ盛土工法に変えられた。国交省は変更後の対策工事費の公表を避けているが、大幅な経費削減であったことは確実である。

吾妻川は中和対策がされているものの弱酸性であり、また、ダム貯水池周辺に分布する熱水変質層から酸性地下水が浸出することも考えると、酸性水により、セメント成分が溶け出して、押さえ盛り土に使ったソイルセメントが劣化する危険性が大きい。更に、代替地の土質試験データを恣意的に修正したり、ありえない「すべり面」を想定したことも指摘されている。

このままでは、ダムに湛水した場合、酸性水の影響や水位の変動で地すべりが起きる可能性が高く、地震が起きれば脆弱な地盤はひとたまりもない。

国においては住民の命と財産を守るため、試験湛水を行う前に、万全なる地すべり防止対策を講じることを強く求める。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

2019年6月28日
千葉県議会議長

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参議院議長